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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)1947号 判決 1977年12月19日

本店所在地

東京都渋谷区東一丁目二八番九号

小倉工業株式会社

(右代表者代表取締役小倉章一)

本籍

東京都渋谷区東一丁目一一番地

住居

同都同区東一丁目二八番九号

会社役員

小倉章一

昭和八年六月一五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうち審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人小倉工業株式会社を罰金一、六〇〇万円に、被告人小倉章一を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人小倉章一に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人小倉工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、合成樹脂金型設計製作、合成樹脂射出成型等を目的とする資本金一、五〇〇万円の株式会社であり、被告人小倉章一(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役(昭和五一年二月五日以前は取締役)としての業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四八年七月一日から同四九年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一、四一八万七、一一二円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年八月三〇日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六、一一八万七、六六四円でこれに対する法人税額が二、二八一万五、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第二一〇三号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、四〇〇万三、二〇〇円(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)と右申告税額との差額二、一一八万七、七〇〇円を免れ、

第二  昭和四九年七月一日から同五〇年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億〇、二七〇万九、四一九円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年八月二八日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六、一六五万三、四三一円でこれに対する法人税額が二、二六五万六、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号の二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三、九〇七万一、〇〇〇円(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)と右申告税額との差額一、六四一万四、二〇〇円を免れ、

第三  昭和五〇年七月一日から同五一年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二、八六八万四、〇二八円あった(別紙(三)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年八月三一日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五、五二九万〇、九六五円でこれに対する法人税額が二、〇五四万七、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号の三)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、九九〇万〇、五〇〇円(税額の算定は別紙(四)の三計算書参照)と右申告税額との差額二、九三五万三、三〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

第一  判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、

一  被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する各供述調書(乙1、2)

一  田中盛昭の検察官に対する各供述調書(甲一22、23)

一  登記官作成の登記簿謄本(甲一1)

第二  別紙(一)ないし(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、

(イ)  「売上」(各<1>)につき

一 大蔵事務官作成の売上除外調査書(甲一2)及び売上除外(小口分)調査書(甲一3)

一 前掲田中盛昭の検察官に対する昭和五二年七月一二日付供述調書(甲一22)

(ロ)  「期首製品棚卸高」(各<2>)、「期末製品棚卸高」(各<3>)、「期首仕掛品棚卸高」(各<14>」、「期末仕掛品棚卸高」(各<15>)につき

一 田中盛昭作成の「金型たな卸及び同仕掛品の価額について」(甲一4)、「売上除外した製品のたな卸除外額について」(甲一5)、「売上繰延した製品のたな卸額について」(甲一9)と題する各上申書

一 田中盛昭の大蔵事務官に対する昭和五二年三月一日付質問てん末書(甲一21)

一 押収にかかる被告会社の昭和四九年六月期確定修正申告書一袋(昭和五二年押第二一〇三号の符号四)

(ハ)  「期首原材料棚卸高」(各<4>)、「期末原材料棚卸高」(各<6>)につき、

一 田中盛昭作成の「上申書『原料たな卸額について』の訂正」と題する訂正上申書(甲一7)

一 田中盛昭の大蔵事務官に対する昭和五二年二月二一日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二四日付各質問てん末書(甲一16ないし19)

(ニ)  「当期仕入高」(別紙(一)<5>)、「交際接待費」(各<18>)、「運搬費」(別紙(二)、(三)<20>)、「雑費」(別紙(一)(二)<28>、同(三)<27>)、「支払利息割引料」(別紙(二)<35>、同(三)<36>)につき、

一 前掲田中盛昭の検察官に対する昭和五二年七月一三日付供述調書第一六項(甲一23)

一 大蔵事務官作成の簿外経費調査書(甲一11)

(ホ)  「機械減価償却費」(各<12>)、「価格変動準備金繰戻し」(別紙(二)<39>、同(三)<38>)、「価格変動準備金繰入れ」(別紙(一)<42>、同(二)(三)<41>)につき

一 被告人の大蔵事務官に対する昭和五二年二月一六日付質問てん末書(乙3)

一 渋谷税務署長作成の証明書(甲一13)

一 大蔵事務官作成の機械減価償却費調査書(甲一8)

(ヘ)  「租税公課」(各<17>につき、

一 検察事務官作成の捜査報告書(甲一10)

(ト)  「雑収入」(各<34>)につき、

一 大蔵事務官作成の雑収入調査書(甲一12)

第三  別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、

一  押収にかかる被告会社の昭和四九年七月期、同五〇年六月期及び同五一年六月期各法人税確定申告書各一袋(前同号の符号一ないし三)

(法令の適用)

法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一、六〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期犯囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 半谷恭一)

別紙(一)

修正損益計算書

小倉工業株式会社

自 昭和48年7月1日

至 昭和49年6月30日

別紙(一)の2

別紙(二)

修正損益計算書

小倉工業株式会社

自 昭和49年7月1日

至 昭和50年6月30日

別紙(二)の2

別紙(三)

修正損益計算書

小倉工業株式会社

自 昭和50年7月1日

至 昭和51年6月30日

別紙(三)の2

別紙(四)の一

税額計算書

小倉工業株式会社

昭和48年7月1日~昭和49年6月30日事業年度分

〃49年7月1日~〃50年6月30日〃

〃50年7月1日~〃51年6月30日〃

(48/7~49/6)

別紙(四)の二

(49/7~50/6)

別紙(四)の三

(50/7~51/6)

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